「料金は、サイトに載せたほうがいいのでしょうか」── 自社サイトや資料を担当していると、一度は社内で議論になる問いです。載せると問い合わせが減るのではないか。競合に見られるのではないか。案件ごとに見積もりが変わるので、そもそも載せられる金額がない。

先に答えを書きます。料金は、「金額を出すか、出さないか」の二択で考えると決まりません。基準にするのは、買い手が自社の条件に当てはめて「予算の桁が合うか」を判断できるところまで出すことです。そのために、まず見積もりの前提になる4つの項目を揃え、そのうえで金額を、条件を添えた目安かパッケージ価格のどちらかで示します。

AI検索で選ばれる会社、選ばれない会社では、公式サイトに料金の目安を置く必要があることを扱いました。本記事はその次の疑問として、案件ごとに見積もりが変わる商材も含めて、「どこまで、どう出すか」の決め方を扱います。


買い手は、売り手に連絡する前にどこまで進んでいるか

HubSpot Japan が2026年7月に発表した「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」に、料金の出し方を考える材料になる数字があります。回答者は買い手の側の人で、直近12か月以内にBtoB商材の比較・選定・稟議・承認・決裁などに関与した、従業員50名以上の企業に勤務する1,573名です。設問の「今回の購買」は、その期間に関与した購買のうち最も関与が大きかった1件を指し、BtoB商材は業務用途の商品・サービスです(インターネット調査。回答は自己申告)。

  • 購買検討で触れる情報の信頼度を聞いた設問では、「価格・追加費用・契約条件が明瞭な情報」が60.6%で、10項目の中で最も高い結果でした
  • 売り手に接触することがあると答えた1,431名のうち、接触する時点で、複数の候補をリストアップしている段階以降まで検討が進んでいる人は63.5%でした
  • 最初に売り手に接触する目的では、「価格・見積もりを確認するため」が42.4%で上位でした

出典:HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」(2026年7月16日発表。調査実施:マクロミル、調査期間:2026年6月11日〜16日)

ここからは当社の解釈です。売り手に連絡する買い手の6割強は、複数の候補をリストアップしている段階以降で連絡しています。そして、最初の連絡の目的として上位に挙がるのが価格の確認です。公式サイトに料金の手がかりがなければ、買い手は候補の比較を、価格が分からないまま進めることになります。

なお、この調査は「料金を載せると問い合わせが増える」ことを示したものではありません。示しているのは、価格や追加費用、契約条件が明瞭な情報を、買い手が信頼できる情報として見ているということです。

まず揃える4つの項目

金額そのものの前に、公開を検討できる項目があります。個別見積もりが中心の商材でも、社内で見積もりの決まり方を整理できていれば、次の4つは書けます。

項目書くこと買い手が判断できること
1. 金額の決まり方何によって金額が変わるか(ページ数、利用人数、期間、対象範囲など)自社の条件だと高くなりそうか、抑えられそうか
2. 含むもの・含まないもの料金の範囲でやること、やらないこと他社の見積もりと同じ範囲で比べられているか
3. 追加費用が出る条件どんなときに別料金になるか(要件の追加、回数の超過など)最初の金額から、後で増えることがあるか
4. 契約条件税抜・税込の別、契約期間、支払いの時期、更新・解約の条件社内の検討資料に「総額」と「期間」を書けるか

調査の選択肢には、「価格」だけでなく「追加費用・契約条件」も含まれていました。金額が書いてあっても、何が含まれていて、どんなときに増えるのかが書いていなければ、買い手は社内で説明しにくくなります。

ただし、4項目だけでは、買い手は見積もりの前提と、確かめるべき条件が分かるところまでです。100万円の話なのか、1,000万円の話なのかという予算の桁を判断するには、金額の手がかりが要ります。それが次の2つの出し方です。

金額の出し方は2つ

金額を示せる場合、本記事では出し方を2つに整理します。どちらを使うかは、商材の作りで決まります。

出し方A:条件を添えた目安

案件ごとに金額が変わる商材は、「〇万円〜」や「〇万〜〇万円」といった目安を、どんな条件のときの金額かを添えて出します。「〇万円〜」だけでは、自社がその下限に近いのか、ずっと上なのかが分かりません。「〇〇の場合は〇万〜〇万円」と、代表的な条件とセットで示すと、買い手は自社との差を考えられます。

代表的な条件は、机上で考えた「標準構成」ではなく、過去の見積もりを複数見返し、問い合わせの時点で多かった条件の中から、社内で根拠を説明できるものを1つ選びます。そのほうが、実際に問い合わせてくる買い手の状況に近い目安になりやすくなります。

出し方B:パッケージ価格

提供する範囲と期間を固定できる商材は、「〇万円/〇週間/打ち合わせ〇回」のように、金額と範囲をセットで出します。買い手は、その金額と期間を社内の検討資料に書き写せます。ただし、金額だけでは稟議の材料として足りません。4項目の「含まないもの」と「契約条件」を同じページに置いておくことが前提です。

どちらも難しいとき

案件の幅が大きく、代表的な条件を1つに決められない場合は、4項目を揃えたうえで、「最小の構成でいくらからか」だけを示せるかを検討します。それも難しい場合は、問い合わせの後に何が起きるか(見積もりが出るまでの日数、打ち合わせの回数、見積もりに費用がかかるかどうか)を書いておくと、買い手は連絡するかどうかを判断しやすくなります。

「問い合わせが減るのでは」「競合に見られるのでは」

料金を出した結果、予算が合わないと判断した買い手が、問い合わせの前に候補から外す可能性はあります。一方で、出していない場合は、価格を知らないまま連絡してきた相手との最初の商談が、価格の説明から始まります。予算が合わないと分かるのは、その後です。

どちらがよいかは、一律には決まりません。料金を出して問い合わせの件数が減るかもしれないことと、出さずに価格の説明から始まる商談に時間を使うこと。どちらを引き受けるかを、自社で選ぶことになります。判断の材料は、自社の直近の問い合わせの中にあります(確かめ方は、最後の「自社で確認すること」に書きます)。

競合に見られる点について。公式サイトに置いた情報は、たしかに競合にも見えます。ただ、サイトに載せていなくても、買い手が比較の途中で見積もりを取れば、金額は買い手の手元で他社と並べられます。隠しておきたい情報(顧客ごとの値引きの条件や、原価の内訳)と、買い手が判断に使う情報(4項目と金額の目安)を分けて考えると、出せる範囲が見えてきます。

架空の例:案件ごとに見積もりが変わる会社の場合

以下は説明のための架空の設定です。実在の会社の実績や、業界の相場を示すものではありません。

全社従業員40名の受託開発会社(架空)が、これまで「料金はお問い合わせください」としていた業務システム開発のページに、4項目と目安を載せる場合を考えます。

  • 金額の決まり方:画面の数、連携する既存システムの数、公開後の保守を付けるかどうか、の3つで変わる
  • 含むもの・含まないもの:要件の整理・設計・開発・テストを含む。サーバーの利用料と、既存データの移行作業は含まない
  • 追加費用が出る条件:開発の途中で画面や機能を追加した場合、連携先の仕様が変わった場合
  • 契約条件:金額はすべて税抜。着手時と納品時の2回に分けて請求。保守は1年単位の契約
  • 目安(出し方A):過去の見積もりで多かった「画面10〜15・連携1つ・保守なし」の場合で、400万〜600万円

金額の幅は残りますが、買い手は「自社は画面が20ある」「連携先は2つ」と、自社の条件との差を考えられます。載せた後は、問い合わせの内容と、最初の商談で価格の説明にかかっていた時間が変わったかを見て、目安の条件や幅を見直します。

例:プロレクトの料金ページを、この分け方に当てはめると

プロレクトの公式サイト(prollect.jp)では、3つのサービスの料金をそれぞれのサービスページに載せています。2026年10月21日時点の掲載内容を、本記事の分け方に当てはめると次のようになります。「」内はページの文言です。料金を載せたことで問い合わせがどう変わったかは、検証していません。

サービス金額の出し方載っている項目載っていない項目
受注導線コンテンツ設計パッケージ価格:「30万円/2〜3週間/オンラインMTG3回」(税抜)含むもの・含まないもの(納品物の一覧と、「制作は含みません」)、追加費用が出る条件(FAQ)、税抜の表記契約条件のうち支払いの時期と解約の条件
意思決定支援コンテンツ制作目安:「30万円〜」(税抜)金額の決まり方(「制作物の種類・ページ数・調査量・構成難易度に応じてお見積もり」)、「含まれるもの」「含まれないもの」、期間の目安(「4〜6週間程度」)、追加費用が出る条件(FAQ)、税抜の表記目安に添える代表的な条件とその金額、契約条件のうち支払いの時期と解約の条件
実行・定着パートナーパッケージ価格:「月30万円/標準3か月」「総額(税抜)90万円」「含まれること」「含まれないこと」、契約の単位(3か月)と解約・延長の条件、追加費用が出る条件(FAQ)、税抜の表記契約条件のうち支払いの時期

この記事の初版の時点では、3つのページとも「税抜・税込の別」と「追加費用が出る条件」が書かれていませんでした。同じ2026年10月21日に、3つのページへ税抜の表記と、追加費用についての FAQ を加えています。それでも、支払いの時期は3つとも書かれていません。目安で出している意思決定支援コンテンツ制作には、代表的な条件とその金額もまだありません。本記事の基準は、プロレクト自身のページにもそのまま当てはまります。

自社で確認すること

自社のサービスごとに、次の3つの問いに順に答えてみてください。

  1. 金額が何で変わるかを、要素に分けて説明できるか。説明できないなら、まず社内で見積もりの決まり方を整理するところからです。説明できるなら、4項目の「金額の決まり方」は書けます
  2. 過去の見積もりから、代表的な条件とその金額を1つ示せるか。示せるなら、出し方A(条件を添えた目安)で出せます
  3. 提供する範囲と期間を固定しても、運用できるか。固定できるなら、出し方B(パッケージ価格)も選べます

2と3がどちらも「はい」なら、範囲を固定して売りたいサービスは出し方B、案件ごとに範囲を調整したいサービスは出し方Aを選びます。どちらも「いいえ」なら、4項目に加えて、最小の構成の金額か、問い合わせの後の流れ(見積もりまでの日数・打ち合わせの回数・費用の有無)を載せます。

あわせて、直近3か月など期間を決めて問い合わせを見返し、次の3つを数えます。どこまで出すかを決めるときの判断材料になります。

  • 価格を知ったうえで来た相手が、何件あったか
  • 予算が合わないことが分かって終わった件数
  • 最初の商談で、価格の説明にどのくらい時間を使ったか

答えが出たら、サービスごとに次の4つを決めます。

  • 載せる内容:4項目と、出し方A・Bのどちらで示すか
  • 載せる場所:サービスページ、料金ページ、資料のどこに置くか
  • 更新する人:価格や条件が変わったときに、誰が直すか
  • 見直す日:いつ、掲載内容と問い合わせの変化を見直すか

まとめ ── 金額の前に、見積もりの前提になる4項目を揃える

料金をどこまで出すかは、金額を出すか出さないかではなく、買い手が自社の条件に当てはめて予算の桁が合うかを判断できるかで決めます。まず、金額の決まり方・含むもの/含まないもの・追加費用が出る条件・契約条件の4項目を揃えます。そのうえで、案件ごとに金額が変わる商材は条件を添えた目安で、範囲と期間を固定できる商材はパッケージ価格で示します。

料金の情報は、買い手が社内で検討を進め、稟議を通すときの材料にもなります。稟議の場面で発注担当者が何を求められているかは、稟議とはの記事で扱っています。