「広告(コンテンツ)の効果が、売上にどうつながっているのか説明できない」── BtoB マーケティングの現場で、よく聞く悩みです。

DAGMAR(ダグマー)は、まさにこの「効果をどう測るか」に答えを出そうとした理論です。ただし、もともとは消費財の広告を前提に作られた考え方なので、そのまま BtoB に当てはめると「認知は取れているのに、商談・受注につながらない」というズレが起きます。

この記事では、まず DAGMAR の定義を短く押さえたうえで、BtoB の受注導線(課題認識 → 情報収集 → 比較検討 → 社内検討 → 発注判断)に翻訳して使う方法を解説します。具体的には、自社の導線がどの段階で止まっているかを 10項目でセルフ診断し、段階ごとに「何を測るか」「どのコンテンツで動かすか」を出し分ける形に落とし込みます。

「DAGMAR を知る」ことが目的ではありません。自社の見込み客が、どの段階で止まっていて、次に何を打てばいいかが見えることがゴールです。

なぜBtoBでは「DAGMARをそのまま使う」とズレるのか

BtoB の受注は、消費財のように「個人が見て、納得して、その場で買う」とは進みません。具体的には、以下のようなズレが起きます。

  • 意思決定者が複数いる:担当者が「確信」しても、その上司・他部署・決裁者がそれぞれ別の段階にいます。担当者1人の心理段階を測っても、受注の可否は分かりません。
  • 「確信」と「行動」の間に"社内検討(稟議)"という長い壁がある:BtoB では、担当者が納得してから実際の発注まで、社内を通すための時間と素材が必要です。ここが最大の詰まりポイントになります。
  • 認知を増やしても受注は増えないことがある:表示回数やPVといった「認知の指標」が伸びても、比較検討・社内検討で止まっていれば商談化しません。上流の指標だけを追うと、詰まりの本当の場所を見落とします。

つまり BtoB で DAGMAR を活かすコツは、5段階を「認知 → 理解 → 確信」と素直に追うことではなく、「比較検討・社内検討・発注判断のどこで止まっているか」を測る道具として読み替えることです。

DAGMAR のオリジナル5段階を、BtoB の検討プロセスに翻訳すると、おおむね次のように対応します。

DAGMARの段階BtoBの検討プロセス測るべきこと
認知課題認識・情報収集自社課題と結びつけて認知されているか
理解情報収集・比較検討「他社ではなく自社が候補に入る」理由が伝わっているか
確信社内検討(稟議突破)担当者が社内を通すための素材を持てているか
行動発注判断最後の不安を払拭する材料が揃っているか

この「翻訳表」を頭に置くと、次のセルフ診断が読みやすくなります。


【セルフ診断】自社の受注導線は、どの段階で止まっているか(10チェック)

DAGMAR の理論を学ぶより前に、まず自社の見込み客がどこで止まっているかを把握するのが近道です。以下の10項目のうち、自信を持って「Yes」と言える項目はいくつあるでしょうか。

5つのまとまり(認知の質 / 理解 / 比較検討 / 社内検討 / 発注判断と計測)で、自社の導線が受注まで通っているかを多面的に診断します。

【認知の質】

  • 1. 表示回数・PVが、自社の主要ターゲット(受注率が高い層)からの流入と結びついていることを確認できている
  • 2. 「認知は取れているのに商談化しない」状態が起きていないか、上流と下流の数字を分けて見ている

【理解】

  • 3. 見込み客が「自社が何の課題を解決するか」を、こちらの言葉ではなく顧客の言葉で理解できる状態になっている
  • 4. 「他社ではなく自社が候補に入る理由」を、情報収集段階のコンテンツ(ホワイトペーパー・記事)で伝えられている

【比較検討】

  • 5. 競合と比較される場面で、自社が選ばれる根拠を比較資料・ウェビナーで提示できている
  • 6. 比較検討から商談化までの転換率(資料DL→商談など)を、何らかの形で測っている

【社内検討(稟議突破)】

  • 7. 担当者が社内(上司・他部署・決裁者)を説得するための素材(稟議補助資料・ROI根拠)を渡せている
  • 8. 「担当者は乗り気だが、社内で止まっている」案件がどれくらいあるか把握している

【発注判断と計測】

  • 9. 発注直前の「最後の不安」(導入後の運用・サポート体制など)に答えるコンテンツがある
  • 10. 各段階の転換率を分けて記録しており、「どの段階で何件落ちているか」をボトルネックとして特定できる

セルフ判定

該当数状態次にやること
8項目以上段階ごとに測り、出し分けができているDAGMARの目標設定を「段階別の改善目標」に落とし込む段階へ。本記事後半の「段階別に何を測り、何で動かすか」をお読みください
4〜7項目上流(認知・理解)は見えているが、社内検討・発注判断の計測が弱い詰まりが「比較検討の後ろ」に偏っている可能性が高い状態です。本記事の段階別整理で、抜けている段階を特定してください
0〜3項目全体を「認知の指標」だけで見ており、どこで止まっているかが分からないDAGMARの考え方を使い、まず段階を分けて測ることから始めるのが近道です。本記事が、その分け方の順序を示します

「0〜3項目」と判定されても、施策が悪いとは限りません。段階を分けずに「PV・表示回数」だけで効果を見ているために、詰まりの場所が見えていないだけ、というケースが現場では非常によく見られます。DAGMAR の本来の価値は、まさにこの「段階を分けて測る」発想にあります。


💡 10チェックで「4〜7項目」「0〜3項目」だった方へ

「認知は取れているのに、商談・受注につながらない」── これは、BtoBマーケでは珍しい悩みではありません。多くの場合、原因は施策の質ではなく、比較検討より後ろ(社内検討・発注判断)の素材と計測が抜けていることにあります。

どの段階で止まっているかを社内だけで突き止めるより、過去の商談・失注を一緒に見ながら論点を整理する方が早く特定できます。

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広告効果の測定指標 ── BtoBでは「段階ごとに違う指標」で測る

DAGMAR を BtoB で使うなら、「認知率・理解度・購入意欲・実売数」という消費財寄りの指標をそのまま使うのではなく、検討プロセスの段階ごとに、見るべき指標を分けるのが実務的です。

検討プロセス主に見る指標この指標が動かないときの示唆
課題認識・情報収集表示回数・流入数・資料DL数認知の入口が細い。ただしここが伸びても下流が動かなければ別の段階が原因
比較検討資料DL→商談化率・ウェビナー参加率「候補に入っているが、選ばれていない」。比較軸の提示が弱い可能性
社内検討商談→稟議通過率・提案後の失注理由担当者は乗り気でも社内で止まる。稟議突破素材の不足が疑われる
発注判断最終提案→受注率最後の不安(運用・サポート・実績)が払拭できていない

ここで重要なのは、上流の指標(表示回数・PV)だけを KPI にしないことです。DAGMAR が警告しているのは「売上だけを見ても改善点が分からない」という点でしたが、BtoB では逆に「認知の指標だけを見ても、受注の詰まりは見えない」という落とし穴があります。

「どの段階で、何件、なぜ落ちているか」を分けて記録できて初めて、DAGMAR的な「測れる目標設定」が機能します。各段階の転換率を比べ、最も落ちている段階=ボトルネックを見つける考え方は、ボトルネックとは?意味・見つけ方・解消方法を事例付きで徹底解説 もあわせてお読みください。


広告効果の測定方法と手順 ── BtoBの受注導線に合わせた5ステップ

DAGMAR の元々の手順(目標設定 → ターゲット設定 → 現状分析 → 実施 → 効果測定)を、BtoB の受注導線に合わせて読み替えると、次のようになります。

Step 1:「どの段階の目標か」を決める

「認知を増やす」のように曖昧にせず、どの段階を動かすのかを先に決めます。「比較検討から商談化への転換率を上げる」「社内検討で止まる案件を減らす」など、段階を特定するのが出発点です。

Step 2:ターゲットを整理する

「誰に」を整理します。BtoB では、担当者だけでなくその上司・決裁者という別の意思決定者がいることを忘れないようにします。担当者向けと決裁者向けで、刺さる素材は異なります。

Step 3:現状分析を行い、段階ごとの転換率を把握する

過去の商談データから、各段階の転換率を出します。「資料DL→商談化が10%、商談→稟議通過が30%」のように分けて見ると、どこで一番落ちているかが見えます。ここが DAGMAR の「現状値を知る」に対応します。

Step 4:詰まっている段階に絞ってコンテンツを打つ

全段階を一度に手当てしようとせず、最も落ちている段階に絞って素材を投入します。社内検討で止まっているなら稟議補助資料、比較検討で止まっているなら比較資料、というように、段階に対応した打ち手を選びます。

Step 5:効果測定と分析を行い、次に活かす

打った後、その段階の転換率が動いたかを測ります。DAGMAR の核心は「測れる目標を立て、達成度を確認する」ことなので、ここで「狙った段階の数字が動いたか」を必ず確認します。動いていれば次の段階へ、動かなければ素材を見直します。

【判断基準】どの段階に手を打つべきか

状態判定次のアクション
表示・流入は多いが、資料DL・商談化が少ない比較検討で止まっている「他社ではなく自社」の比較軸を提示する比較資料・ウェビナーを用意する
商談化はするが、提案後に失注が多い社内検討で止まっている担当者が社内を通すための稟議補助資料・ROI根拠を整える
最終提案まで進むが、最後で決まらない発注判断で止まっている導入後の運用・サポート・実績など「最後の不安」に答える素材を足す
そもそも段階別の数字が取れていない計測が未整備まず各段階の転換率を分けて記録する運用から始める

コツ・留意点 ── BtoBでDAGMARを活かすために

DAGMAR を BtoB の受注導線に活かすとき、押さえておきたい点が3つあります。

1. 分析結果は次の打ち手に活かす(測って終わりにしない) 各段階の転換率を測ったら、最も落ちている段階に次の素材を投入します。測定そのものが目的ではなく、「次にどこへ手を打つか」を決めるための材料です。

2. リードナーチャリングに応用できる 「確信(社内検討)」の段階で止まっている見込み客には、すぐの提案ではなく、稟議を後押しする素材を継続的に届ける方が効果的です。DAGMARの段階モデルは、「どの段階の見込み客に、何を届けるか」を整理する地図として使えます。

3. ボトルネックを段階で特定する 全段階を均等に改善しようとすると、リソースが分散します。DAGMARの発想は「どの段階で詰まっているかを特定し、そこに絞る」ことにあります。詰まりの見つけ方は ボトルネックとは を、現状把握の手法は マーケティングリサーチとは?実施するメリット、手法、手順について解説します もあわせてご覧ください。


まとめ

DAGMAR(ダグマー)は、「広告の目標を、売上ではなく測れるコミュニケーション目標で定義しよう」という理論です。ただし、もともと消費財を前提にした5段階モデルなので、BtoB にそのまま当てはめると「認知は取れているのに受注につながらない」というズレが起きます。

BtoB で DAGMAR を活かす要点は、5段階を素直に追うことではなく、「比較検討・社内検討・発注判断のどこで止まっているか」を段階別に測る道具として読み替えることにあります。整理の順序は、

1. セルフ診断で「自社がどの段階で止まっているか」を把握する(本記事の10チェック) 2. 段階ごとに違う指標で測り、最も落ちている段階(ボトルネック)を特定する 3. その段階に絞って、対応する素材(比較資料・稟議補助資料など)を打つ 4. 狙った段階の転換率が動いたかを測り、次の段階へ進む

という流れです。

「認知を増やす施策」をいくら足しても、詰まりが社内検討(稟議突破)にあるなら、受注は増えません。DAGMARを"認知の理論"としてではなく、"どこで止まっているかを測る理論"として使う── これが、BtoBで効果測定を受注につなげる分かれ目になります。そして、その詰まりの特定と素材の設計を伴走するのが、Prollect の役割です。


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どの段階で、何件、なぜ落ちているのか ── これを分けて見ない限り、次の打ち手は決められません。

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